心に留めておきたいこと

格言とか法則と言ってしまうとちょっと仰々しい。 でも、人と話をする、アドバイスを与える/受ける、 本質をさぐる、まったりから抜け出す、などなど多くの場面で 役に立つ教訓。手始めに「コンサルタントの秘密」からの 抜粋が中心となるが、少しずつ書き溜めていきたい。 覚えやすさをねらって韻を踏んであるものが多いことにも注目。

ボールディングの逆行原理 (Boulding's Backword Basis)

「ものごとがそうなっているのは、そうなったからだ」つまり あらゆる事象は、そうなるべくしてなっているということ。 問題点を探ろうとするとき、その経緯を丁寧に調べることは とても有意義だということ。今となってみれば、とても不合理に 思えることであっても、当時は妥当であったかもしれない。 ボールディングとは、経済学者さんとのこと。

ルウディのルタバガ法則 (Rudy's Rutabaga Rule)

「第1番の問題を取り除くと、第2番が昇格する」つまり、 人間における、課題、気にかかること、(あるいは、こうしたい、 ああしたい、という欲望)に、際限は無い、ということ。 ルウディとは、ワインバーグさんが食品売り場で 働いていたときの上司。ルタバガとは西洋かぶ?。回転のよい 野菜の陳列を増やそうと思案している上司に対し、 「ルタバガは売れてないようですよ」とアドバイスしたことに 由来する。で、ルタバガの陳列を減らしたところで、 続けざまに「次に売れてないのは?」と聞いてきたというわけ。 情報処理サービス業に従事する私たちは、ITリテラシの向上が これからという知り合いから、ちょっとしたことを聞かれたりする。 で、それに対してアドバイスして、問題がひとつクリアになると、 「いや、実は○○もね」という具合に、次々と依存されて しまう。アドバイスを与えるということにちょっと恐怖を 感じることは多い。頃合をみて突き放すことは必要かもしれない。 あるいは、先方が自ら問題を解決できるようにしてあげることが 重要だろう。

パンドラ性発疹 (Pandora's Pox)

「新しいものは決してうまく働かない。たがいつも、今度こそ うまくゆくだろうという希望がある。」新しいものが、 何かしら不具合を抱えてしまうことくらい、この業界に 住む私たちは知っている。でもアホな失敗は日々繰り返される。 パンドラの箱からありとあらゆる災難が世界に飛び出した そうなのだが、最後に最もやっかいな「災難」があったのだ とか。それが「希望」。「希望」さえなければ、 人は災難から教訓を得て間違いを収束させることができたのに。 が、「希望」を持っているため、何度も何度も間違いを繰り返す。 新しいものに触手を伸ばしてしまうのは人間の持って生まれた 病気としてあきらめるしかない。そう割り切った上で、 私たちは、リスクを減らす方策を常に考えていかなければ ならない。

平準化の法則 (The Level Law)

「有能な問題解決者は、数多くの問題を抱えることはあるが、 一つの支配的な問題を抱えることはめったとない」仮に、 大きな問題を長い間抱えたままになっているとしたら、それは 問題の大きさを測るスキームや、プライオリティを付けて 取り組む仕組みが無い、という組織あるいは管理者としての、 構造的な問題を意味するため。いつも、大きな問題から順序良く こなしてさえいれば、普段は取るに足りない 小さな課題がぽつぽつといくつか存在する、という状況に 落ち着いているもの、ということ。

フォードのフィードバック定理 (Ford's Feedback Theorem?)

「1.人はいかなる河川から、いかなる目的で、どれだけの量の 水を取っても差し支えない。2.人は同量の水を、彼らがそれを 取った地点の上流に返却しなければならない。」公害問題に 対するヘンリーフォードさんの提案。なにかやるなら、 人はその結果を自分自身甘受しなければならない、ということ。 「闘うプログラマ」に出てくる、「ドッグフードを食べる」も これにあたる。NT開発において、NTの開発者自身が開発中の NTカーネルのうえで作業をするというもの。自分が作っている ものが頻繁にクラッシュしたら、コーディング中のデータが パーになるので、いやがおうにも品質に神経を使うことになる、 というもの。仕事をしていると、構築されるシステムの多くで、 深刻なパフォーマンス問題が起こる。これは、それぞれの モジュールをコーディングしているプログラマが、最終的に そのシステムの利用者ではないからだ。一つ一つの ステップにどれだけCPUサイクルが取られ、それが積もり積もると どうなるか、ということを真剣に考える必要がないというのが 問題。自分で将棋プログラムという一つの閉じたシステムを 作っていると、パフォーマンスはとても気になる。 処理の速度は、最終的な棋力になって現れ、1年間の取り組みの 結果として、選手権での勝敗として成績に残るので。 だから、プロファイリングや性能測定をする。

本管の金言 (The Main Maxim)

「知らなくても怪我をするとは限らないが、思い出さないと すれば間違いなくやられる。」これは、ワインバーグ宅の 庭の先に埋まっているガス管の話。普段は忘れててもいいが、 本当に肝心なとき、例えば新たに整地などの目的で掘り返す ときに思い出すことができないと、とんでもないひどい ことになる、というもの。だから、ガス会社は「掘るときは 電話してね」というちっちゃなお願いを書いたカレンダーや マグネット、キーホルダーなどを毎年ご丁寧に贈ってくる。 これらは、掘削の日取りをカレンダーに書き込む、ショベルカーの キーを手にする、そういったときに思い出してもらうたの 引き金(トリガ)を植えつける意味がある。身近な例では、 小さい頃に怪我をした経験とか、トラウマとか、そういった ものも、何かを思い出すトリガが関係している。人は仕事をしていて あるいは生きていて、多くの教訓を得る。が、知っていたのに、 肝心なときに「思い出せなくて」トラブルに巻き込まれる。 だから、自分自身このページを、思い出す、気づくための ひとつのトリガにしていきたいと思っている。

プレスコットのピクルス原理 (Prescott's Pickle Principle)

「漬け水がキュウリに漬かるよりは、キュウリが漬け水に 漬かるほうが早い。」これは、「長いものには巻かれろ」という 世渡り術指南の、ちょうど逆を意味する。 すなわち、大きな仕組みに影響を与えようとして、 接触を続けている小さな個(自分)は、結果として、むしろ自分の ほうが変えられてしまう可能性が高い、ということを警告している。 これを受けてどうすべきかというと、ひとつの顧客や組織、 集団に漬かってしまわないようにしよう、というもの。 大企業を顧客に持つ有名コンサルタントらしい教訓。 自分も、「重厚長大ソリューション万歳! ベンダーソリューション 万歳!」な部署に赴任して2年半になる。毒されないように、 いろいろな人と関わりを持ったり行動したり、ということを 続けていきたいものだ。

出展


Taikou Yamada (t-yamada@ceres.dti.ne.jp)