そして、想い出がある。思い入れがある。

 

★競馬コラム1 〜天皇賞・春(1997)〜

 ◎を打ったのは当然、ローゼンカバリーだった。

 当時5歳、その年ははじめから絶好調。しょっぱなAJC杯を奪取し、中山記念はおそらく距離不足からキングオブダイヤ
 の3着に敗れたが、翌々週の日経賞で鮮やかな勝利。本格化といわれていた。
 この馬はどうも遊んで走っているような感じがあり(私はそういう馬ばかりを好きになるので馬券がとれないのだが)、
 いよいよ本気を出せば、という気持ちで×印や、◎までつけた人も多かったと思われる。

 騎乗は完璧だったと思う。
 勘違いしないでいただきたい。この日は我が愛しの横山典弘様がのっていたのではなく、鞍上はこの年シルクジャスティスで
 有馬記念を征することになる凄腕藤田伸二ジョッキーだった(ノリ様はサクラローレル)。
 勝ったのはご存じマヤノトップガン。ローゼンたちよりもっと完璧なジョッキーと、馬がいた。
 そんなことを感じさせるレースだった。

 そのころ私は競馬を始めてまだ2年目で、ローゼンも順調に出世街道を歩んでいたので、自分の好きな馬は勝って当たり前
 みたいな、そんな意識があったかもしれない。それを見事にうち砕いてくれちゃったのがマヤノトップガンだった。
 目の覚めるような足とはこのことで、私はあまりのショックにしばらく呆然としてしまった記憶がある。
 5着に負けたローゼンまでが、コースレコードを破るタイムで走っていた。いろんな馬が、みんな、強かった。
 「まだ競馬シロウトの私には、このレースはオトナ過ぎたのかもしれない。」
 ローゼンカバリーとサクラローレルの単勝馬券を握りしめながら、私はそう思った。