Silicon Graphics の 101 英語キーボード
since Jul.24 2002

Silicon Graphics Inc. (SGI) 社製の RT6856T という 101 英語キーボードをとある人より譲り受けた。 SGI 社といえば CG の世界で圧倒的実績を誇る IRIX ワークステーションで有名で、このモデルも本来 PC 用ではないとすれば、単独で入手するには結構難しい一品ではないかと思う。

外観は大理石調で、内側への比較的強い湾曲構造をもっており、美しい。 SGI の ロゴもそのへんの PC とは違う高級感を漂わせている(と思う)。

カシャカシャ音のするいわゆるメカニカル・タイプと異なり、 メンブレン・タイプとよばれる作りのキーボードだ。 よってキータッチは静かであり、赤子が寝静まった狭いアパートの暗闇で PC を使いはじめたわたしにとって、ありがたみの染みついた懐かしいタイプだ。 キーのストロークも適度で、かつ確かな打鍵感がある。 数々のメーカにキーボードを提供してきたミネベア社の OEM 品だけのことはある。

最近の日本製の PC ではキーを同数個有する 109 型とよばれる JIS 配列キーボードが標準である。 しかし使いもしない Windows キーや漢字変換/無変換キーが密集した 109 よりも、大きなスペースバーが 2 つの Alt キーの間にでんと横たわり、幅広の Enter と Backspace キーを配した 101 英語キーボードのほうが、わたしの好みだ。 わたしは当初より PC-UNIX に親しんだ関係で、英語キーボードのほうが使い慣れてしまったのである。 漢字入力だって大きなスペースキーで変換できたほうが効率がよい。

開高健の「珠玉」という短篇集を読み、「文房清玩」という言葉を知った。 これは昔の中国の文人が、書斎で詩画をなすに用いた硯や筆、文机などの文房具に凝って楽しんだことをいうそうである。

コンピュータ使いにもキーボードへのこだわりがある。 コントロールキーが左シフトキーのすぐ上(つまり通常では CapsLock キーの位置)にないと仕事ができない一流の UNIX プログラマがいる。 職人とはそういうものである。

よいキーボードを手に入れた。 いまその Silicon Graphics Inc. 製のキーボードでこんな駄文を書いているわたしも、文房清玩といきたいところなのだけれど。

現実インターネットで遭遇するキーボード収集マニアからは「キーボードフェチ」という言葉が聞こえてくる。 文房清玩などというあたかも竹林をかよってくる清らかな風のような趣なんてとんでもない。変態的、偏質狂的イメージが先行するのは、サイバー空間がアンダーグラウンドに存する証左か。鳴呼。

 

 

SGI 101 Keyboard