踊る麻酔科最前線

 

電話セールス


<節税対策用ワンルームマンション>

「あっ、◯×先生でいらっしゃいますか?実は私東京の××の◯◯と申します。お忙しいところ、失礼いたしますが、この度当社の×◯駅前のマンションをご紹介したいと.....」医者なら一度ならず聞いたことのあるセリフである。「忙しいから」と言うと「後でご自宅へ連絡を」と食いついてくるし、「興味がない」と言えば決まって続きは「税金対策に」である。
普段は丁重にお断りするのだが、たまには暇潰しに話を聞くこともある。物件は大体、新大阪とか博多や川崎など大都市の駅前というのが多い。一生のうち何回行くかも分からん都市にマンション買ってどうするんだろう。「節税対策に」って、昔は効果あったろうが数年前の税法改正(事業用マンションの購入に伴う借入金の金利を赤字として他の所得と合算する場合は、土地取得に関わる分は除外することになった)でほとんど旨味はなくなってしまった筈である。多分一度も住まない(下手すると見ることもない)マンションを、相場の何割増しかで、信販会社に高い利子払って30年ローンとかで購入して、売るとき後悔しないかなあ。
要するに、月々のローンは賃貸料で「ちゃら」にして、借入金の利子や減価償却や税金分の赤字による節税効果でボーナス払いを補おうというのが基本方針なのであるが。地価の高い大都市でワンルームマンション買っても、節税効果はいいとこ年間20万くらいなもんだろう。頭金200万ならそれを取り返すだけで10年かかる計算である。ボーナス払い分は殆ど持ち出しで、確定申告の度に面倒臭い思いして、30年後にボロボロのマンションが自分の物になるってことなんだろうが.....金が余って使い道に困るっていうなら止めはしませんが。

貴重な発言を頂いたので紹介する。
「節税のマンションは、実は一つ持っているのですが、まったく駄目です。処分できないし、借りる人がいないとどうしょうもありません。私のは塩付けです。」
そうなのである。節税用ワンルーム・マンションの最大の問題は「買い手がつかない」ことにある。家族持ちが実需として欲しがる3LDKの中古マンションと違って、中途半端な広さの物件は投機対象であることが多い。今は新築マンションが値下がりしているので、損のでない値段では買い手がつかない。自分で住まないオーナーが殆どであるから、管理にも不安が残る。下手するとスラム化して荒れ放題なんて可能性もある。自分や家族が使う予定がないマンションを買うのは、所有欲を満たしてくれるくらいのメリットしかない。

 


<先物取引(最重要)>

「赤いダイヤ」なんて言われる小豆相場で身上潰した話はよく耳にするが、あれがいわゆる先物取引である。小豆の他にも、砂糖や綿花、金など幾つかある。これの勧誘は始めは節税マンションと紛らわしいが、うっかり乗ったら大変であるから注意して欲しい。節税マンションなら少々高いお買物ですむし、それで破産したなんて話はまず聞かない。株はちょっと恐いが、よっぽどのめり込まない限りはまあ安全だろう。それはマンションや株の売買が現物取引だからである。
先物取引は現物でなく権利の売買であるため、購入金額の何倍もの損益が出るということを理解して欲しい。簡単に説明すると次のようになる。小豆を例に取ってみよう。

あなたは今年4月に小豆が100トン必要な問屋だとしよう。今は1月で小豆の値段は1トン100万円であるが、あなたは4月には小豆の値段が1トン150万円になるという信頼すべき情報を持っている。3月になれば1億5千万の現金が用意できるのだが、今は手元に現金がない。本当は今、小豆100トンを買っておけば5千万円の利益が出ると分かっているのに現金がないのである。幸い、4月には小豆が1トン50万円になると信じてる間抜けがいて、彼は今すぐ小豆100トンを売りたいと思っている。そこであなたはその間抜けと、4月になったら小豆100トンを、現在の1トン100万円=100トン1億円という相場で購入するという約束をするのである。その契約金として1億円の1%である100万円を払うことにした....とまあ、これが先物取引の本質である。
さて4月になって本当に小豆が1トン150万円になれば、あなたは100万円の資金で5千万円儲けたことになる。ところが、間抜けの筈の相手の読み通り1トン50万円になってしまったら.....あなたは5千万でしか売れない在庫を1億円で購入した(すなわち5千万円の損をした)みじめな問屋という訳である。
実際の先物取引では、契約金の100万円を上回る損失が出た時点(すなわち、小豆が100トン9900万円=1トン99万円以下となった時点)で、代理店から契約金の100万円を諦めて契約を破棄するか、追加証拠金(おいしょう)を積むことを要求される。(実は追証の仕組みはもっと複雑なのだが、分かりやすく単純化した。)ある日突然、小豆1トンが90万円になったとしたら.....あなたはその時点で900万円の負債を抱え込むのである。首を吊りたくなるのは当然ではないか?ストップ高とかストップ安という制度はあるのだが、一般客を守る役に立っているとはとても思えない。
結局、先物取引というのはその品物を扱う問屋などプロ同士の勝負なのである。いざとなったら、何百トンもの商品を在庫として抱えておける資金と倉庫を持った人物だけが参加できる世界なのだ。

先物取引の代理店は「必ず儲かります」と言う。「だったら自分で勝負しろ」と言うと、「我々(先物取引代理店)は取引に参加することを禁じられていますので、お客さんを儲けさせて、売買手数料だけ頂くのです」と答えるのだが.....騙されちゃいけません!!!私が先物取引代理店の社員で、絶対儲かると確信したら.....即、会社止めて、借金しまくって自分で勝負します!何千万、いや何億円儲かることか。「退職してもしばらくは先物取引が禁止されています」だって?うまくいけば何億、何十億と儲かるのにそんなこと本気で心配しませんよ。5年も務所に入る覚悟でやれば数十億という可能性もありますから。
という訳で、先物取引代理店の言うことを信じてはいけません。ひどいところになると、実際の先物取引の手続きはせずに、客が儲けてる間は決して解約させずに、客が損するまで待つ、ということも少なくないのです。
もう一度
警告します。節税マンションで破産した人はいませんが、先物取引に失敗して自殺した人はいっぱいいるのです。

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電話セールス最新の手口

これだけ電話セールスや悪徳商法の情報が知れ渡ってくると、電話を受ける側もセールスの電話だと察した瞬間に電話を切ることが多くなってきた。セールスマンはいかに電話を切られずに話を続けるかに腐心することになる。そのための新しい手口がこれである。

電話がつながるとまず「先日お送りした資料、ご覧頂けましたでしょうか?」と切り出すのである。忙しい現代人は、ダイレクトメールに紛れてしまった親書を見逃すことがあることを恐れている。その心理を利用するのである。「しまった。まだ読んでない」と怯むところへたたみかけるように「確かにお送りしたはずですがお返事頂いておりませんので、口頭で説明いたしましょう。」と続けるのである。これで、1分間は相手に話を聞いて貰えることになる。熱湯バトルをご覧になれば分かるように、1分あればかなりのPRが可能である。敵の戦闘準備がととのわない内に、先制攻撃をしかけようという卑劣な手段ではないか。

私のように百戦錬磨の戦士ともなれば、知らない人からの電話である、というだけで瞬時に戦闘準備が完了するので問題ないのだが。新兵の頃にずいぶん高い授業料を払っているのである(シクシク)。この手口を利用した面白い遊び方をご紹介しよう。「先日お送りした資料、ご覧頂けましたでしょうか?」と聞かれたら、間髪入れずに「拝見しましたよ」と答えるのである。電話口で混乱して「.....???」と黙り込む相手に「続きをどうぞ」と催促する快感は病みつきになるであろう。

 


朝日ソーラーとどこが違うの?

「◯×化成サーキュヒ一ターシステムの御案内
 拝啓日頃、◯×製品を御愛用項きまして、誠にありがとうございます。この度、◯×化成より新製品として開発されましたサーキュヒーターシステムの普及に際し、各地にて御案内及びキャンペーンを展開しております。サーキュヒーターシステムは、現在お使いのガスボイラー、石油給湯機、瞬間湯沸器、その他の給湯器に接続することにより、ガス、石油などの燃費を大幅に節約してセントラル給湯できます。又、新幹線前頭部(◯×化成◯×工場にて生産)に実用化されているFRP使用により、長時間の耐久性にもすぐれ、かつ軽量な特長を生かし御使用頂けます。この機会に是非キャンペーンに参加下さるよう御案内申し上げます。できましたら御参加頂ける、頂けないに拘らず、今後ご使用になる燃料費の大幅な節約の御参考にもなる事ですので多少のお時間を項き、御案内させていただきたいと思います。敬具」
 このご案内を読んで、あなたはこの商品がソーラーシステムのことだと即座に理解できますか?値段が100万円以上で、重さが120kgもあって、ばかでっかい貯留タンクが必要な商品だと想像できますか?できなかったら是非、続きを読んで下さい。

 ある日、この広告がポストに入っていた。もちろん、読まずに捨てたが、数日後女房に電話が掛かってきた。「詳しいことは会ってから話したいが、キャンペーンに参加して欲しい」とのことだったらしい。女房は「本当にガス代が安くなるなら、キャンペーンだけでもお受けしようかしら?」という。俺は「無料デモでも工事費はこっち持ちというのがあるから、断った方がいいよ。うまい話はないもんだから」と答えたのだが、内心は「しめしめ、久しぶりのネタが転がりこんだぞ」と喜んでいた。
 注意して欲しいのは、「無料デモ」という思い込みは、もちろんこっちの「勘違い」である。向こうは「キャンペーンに参加」としか言ってない。だが、相手にそう錯覚させようとするテクニックが使われていないだろうか?

 敵?は日曜日の朝10時にやってきた。こっちがその時間を指定したのだから文句は言えないが、普通の家のお父さんがこの時間以外に人と会えますか?ホームページのネタにならなければ、まだ寝ていたいくらいでしたよ。
 無料デモの誤解はすぐ解けた。商品がいわゆる「ソーラーシステム」であることもすぐ分かった。その場で帰って貰ってもよかったんだが、乗りかかった船だ。最後まで付き合ってやろう。商品の説明に約1時間。メリットは、
 1)暖房分を除くガス代が75%以上節約される。
 2)お湯が軟水で、まろやかになる。塩素も抜ける。
 3)ボイラーの寿命が延びる。
 4)地球環境、省エネに貢献できる。
キャンペーン中の特典は、
 1)工事代金無料
 2)10年間無償保証
 3)◯×家電製品25%オフ
 4)紹介料10万円
さらに妙な計算(計算書見たい方はここをクリック)から、我が家では「20年間で520万円節約になる」んだそうだ。どこが妙な計算かと言えば、
普通にガスを使っていると毎月の支払いは、
 ガス代 10000円
 ボイラー減価償却 4160円の計 14160円だそうだ。
サーキュヒーターシステムにすれば
 ガス代 2500円
 ローン 6800円の計 9300円なんだって?
単純に計算しても年6万円弱の節約にしかならんぞ。しかも「暖房分は除く」、「ボイラーの寿命が延びても減価償却は0にはならない」、「システムの減価償却」が無視されているではないですか?

メリットの2)塩素も抜ける(これはパンフレットには書いてない)はまずいんじゃないの?浄水器で抜くんじゃないんだから。貯水する水の塩素抜いたら食中毒にならないか?
3)ボイラーの寿命が延びる、システムの耐久性(25年)の証拠は?
4)地球環境への影響は、システム製造による悪影響(電力や資源消費、CO2の排出)を無視して議論してもしょうがないでしょう。

特典の3)25%オフって、ディスカウントショップ行けばもっと安いよ。
4)紹介料10万円って、アム◯×イじゃないんだからさ。これは本来購入者に還元される値引きを紹介者に廻しているんでしょ。人間関係にヒビは入りませんか?
こんな特典なんの意味もないね。第一、賭けてもいいがこのキャンペーンは終わることはないんじゃない?

最後になるが女房の感想「結局10年、20年で元をとろうという商品でしょ。いつまで、ここに住んでるか分からないじゃない」というのが一番説得力があった。(^^;主婦の感性も侮れないもんだ。おそるべし!女房族!!


<撃退法>

時々、「勤務中にそんな電話は迷惑だ!」と相手を怒鳴りつけてる先生がいる。「月夜の晩ばかりだと思うなよ」と凄まれたという話も聞く。確かに、相手はこっちの個人情報(少なくとも勤務先か自宅の電話番号)を知っている訳なので、イタズラ電話や無言電話その他の被害を想像すると、こういう対応はあまりお勧めできない。

電話交換手や事務員に「怪しい電話は取りつがない」よう頼んでおくのもよいが、敵もさるもので、医師や患者を装って何とか電話を廻して貰おうとする。効果はあまり期待できないし、事務とセールスマンが口げんかなんてこともよくあるので、彼ら(事務員)にも気の毒である。

向こうだって商売であり、必死なのである。「勤務中は困る」とか「嘘をついて電話をかけてくるのは困る」なんて非難は「カエルの面に小便」である。そして少しでも興味があると思うと食いついてくる。本当に儲かる筈はないなんてことは、あっちの方がよっぽどよく知っていることだから、それを指摘しても「へのカッパ」。自分のセールストークを磨くいいチャンスくらいにしか思わない。

一番良いのは言葉使いはあくまで慇懃に、「興味がない」ことをはっきり告げて、相手のおしゃべりは無視して静かに電話を切ることだ。これで再電話がかかってきたことは一度もない。彼らだってよほど怒らせたりしなければ、トットと次のカモに電話しようと考えるはずだ。さらに付け加えるなら、彼らの商売の基本姿勢は「下手な鉄砲も数うちゃ当たる」であるから、「お互いに時間の無駄ですよ」と教えて上げるのが親切だろう。

 

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